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構造設計を学ぶ-4

(H27年09月05日)

≪第1回≫鉄筋コンクリート造を考える(その1)

前回までは構造骨組の「構造骨組解析の基本」につき、さまざまな角度から検証や

考察とか解説を行ってまいりましたので、このあと「構造設計を学ぶ」シリーズでは

実務者を対象に今一度学びの原点に戻り、かつ解説の難易度を上げています。

構造設計1級建築士講習会テキストを参考にしながら進行して参ります。

最初は、「鉄筋コンクリート造」で、この用語の英文は下記のように表わします。

「Reinforced Concrete Construction」

読み方は、「レインフォースト コンクリート コンストラクション」です。

「Reinforced = レインフォースト」は、過去形の「補強された」の意味を持ちます。

何を何に対して補強するのか・・・これが「学び」であり学問です。

補強の相手は「鉄筋」であり、この「鉄筋」は空気中ではさびてしまいます。

ですからこの「鉄筋」をコンクリートで包むことによって守り、保護しているのです。

また、「コンクリート」は強い「アルカリ性」を持っており化学的補強をしてくれます。

当然、コンクリートの内部の「深い位置」に「鉄筋」が配置されれば「錆び」から守られ

ますが、鉄筋コンクリート造の原理による「力の補い合う」ベストな配置が存在します。

コンクリートは「圧縮力」には非常に強いのですが、残念ながら「引張力」や「せん断力」
には脆性(もろい)的な性状を示します。「鉄筋」は「引張力」には非常に強いですが、「座屈」
には弱いが「圧縮力」「せん断力」にも靱性(,ねばり)的な性状にて相互を補完しあうのです。

以上の材料特性から、少し高度な表現をすれば「コンクリート・鉄筋は非線形性」の強い

材料であり、これらが及ぼす「クリープ・ひび割れ・降伏・圧壊」などの非線形性の効果
に対して的確な判断が構造設計に反映されなければなりません。

コンクリートの種類では、「普通」と「軽量」があり、許容応力度は、「圧縮」「せん断」

「鉄筋との付着」の各応力に対して規定され、コンクリート強度の最低強度については

12N/mm2とあるが、上限は規定されていません。コンクリートの品質規定やJIS、JASS 5

の関係から日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」では、60N/mm2を

上限としています。60N/mm2を超えるコンクリートの強度・変形特性には「高強度

コンクリート技術の現状-2009」で検討されているが許容応力度に関しては明確に示され
ていないのが現状です。

掲載日:2012年11月15日

≪第2回≫鉄筋コンクリート造を考える(その2)

 「コンクリートの材料特性」に続き、「鉄筋の材料特性」にも触れなければなりません。
「鉄筋」には丸鋼と異形棒鋼が用いられますが、その呼称について簡単に解説します。

丸鋼は、「SR 235」であり、「Steel Round Bar 235」となります。

読み方は、「スチール ラウンド バー」であり、235は規格降伏点強度をN/mm2で示す。

異形棒鋼は、降伏点強度の数値により「SD 295~785」であり「SD 490」まで鉄筋の

許容応力度が建築基準法で規定されています。例えば、「SD 295(A,B)」なら

「Steel Deformed Bar 295(A,B)」となります。

読み方は、「スチール ディフォーメッド バー」であり、295は規格降伏点強度をN/mm2で示す。

最後尾の(AとかB)についての説明ですが、「SD 295(B)」は溶接に適するように化学成分

規定が厳しく管理されて、C(炭素/カーボン)は0.27%以下とかSi(ケイ素/シリコン)は0.55%
以下の品質管理があり、市場性が乏しくなり、通常は「SD 295」と言えば、「SD 295(A)」
の事として取り扱います。これらの化学的な論理を説明すると、

「C-炭素」を増やすと引っ張り強さや硬度が増加します。しかし、伸びが減り、耐衝撃性
が低くなり、溶接性が低下します。
「Si-ケイ素」が増えると、低合金鋼のクリープ強さや弾性限界を増し、耐酸化性、耐食性
を高めるが脱炭しやすくなります。
「Mn-マンガン」が増加すると、伸びや耐衝撃性及び耐磨耗性が増し、焼入れ硬化深度が深
くなります。また硫黄による脆性を防止します。

「SD 295(A)」の品質管理の規定内にある以下の化学的論理は、
「P-りん」は鋼中において偏析しやすく一般に好ましくない元素で、含有量も0.05%以下
が普通です。偏析は焼割れの大きな原因となります。またこの元素は酸素との親和性が

強いため溶接性も悪くします。ただし、低炭素鋼の耐食性を増し切削性を良くします。
「S-硫黄」は添加するものではなく不純物として鋼中に存在することがあります。脆性の

原因となるのでできるだけ除去します。

掲載日:2012年11月27日

≪第3回≫鉄筋コンクリート造を考える(その3)

 鉄筋コンクリート造の建築物の「力の流れ」について考えてみましょう。「力」は正直で
かつ「最短ルート」を流れ、いわゆる「寄り道」をせず剛床の場合、平面的には均等に

部材の小さい順に分散されるものと考えています。そこに「架構のモデル化」があります。

「床スラブ」「小梁」「大梁」「壁」「柱」が3次元に組み合わさり架構の構成となります。

当然、それぞれの部材はお互いに「剛」で接合され「連続体」となってその特徴を示す。

なので「3次元モデル」を用いる原則により「立体的な効果」とか「転倒モーメント」や

「P-⊿効果」などを精密に考慮できるものとなります。当然、電算処理の話ですが・・・

ただ、何が何でも「3次元解析」かと言えばそうでもない場合もあります。

それは鉛直力抵抗要素や水平力抵抗要素が平面・立面上、釣合いよく配置されていたり

鉛直や水平に作用する荷重・外力の効果を適切に考慮ができる場合には、2つ直交する

主軸(X軸、Y軸)に分けた「2次元解析」も可能となります。

特に、注意するのは耐震壁と剛節(純ラーメン)架構が混在する場合である。

この場合、耐震壁に取り付く「つなぎ梁」、直交壁は耐震壁の立体挙動(引張側の柱の伸び

上がり、取り付く梁の強制変形)を受けるので、耐震壁の回転を抑える効果を評価できる

モデル化とする必要が出てくる。

基礎に至っては、このRC構造は自重が大きく常時荷重に対する地盤の沈下とか不動沈下に

対しても注意する事が「黄色本」P-526~P-528にも記載されています。

また、地震荷重時に転倒モーメントによる軸力変動が大きい場合、「練成モデル」とすべき
である。しかし、実務上は建築物と基礎構造を分離してモデル化が多いのです。

原因は、地上部分のみ「保有水平耐力計算」を法令・告示が示しているからなのです。

掲載日:2012年12月12日

≪第4回≫鉄筋コンクリート造を考える(その4)

前回は「架構のモデル化」を解説しましたので、このあと各部材ごとに考えます。

この部材は「強度と剛性」並びに「変形性能」を不確実性への配慮をしながらこれらの

構造性能の保証設計を行うことになります。

原則としてRC造の「部材の非線形力学特性」は、コンクリート+鉄筋によるそれぞれの

設計基準強度に基づいた上で、「力の釣合い」や「復元力特性(応力度-ひずみ)関係」と

「変形の適合条件」にて定まります。非線形性の強いこれらの材料はその効果として

「クリープ、ひび割れ、降伏、圧壊」などを精確に考慮が求められます。



・柱、梁の「強度と剛性」については要点を箇条書きすると以下となります。



① 断面の曲げモーメントと曲率→平面保持の仮定の曲げ理論(ストレスブロック法)である。

② 部材の曲げ剛性→ひび割れ、降伏、付着、圧壊を考慮した曲率分布で定める。

③ 軸力変動のある部材→曲げ・軸力の相互な交番作用で強度を定める。

④ スラブと一体の梁→T形梁の弾性曲げ剛性の他、曲げ降伏後の強度増大を考慮する。

⑤ 腰・垂れ・袖壁と一体の柱及び梁→曲げ剛性と強度に及ぼす効果を適切に考慮する。

⑥ 部材の軸方向剛性と強度→ひび割れ、降伏、圧壊を考慮して定める。

⑦ 部材のせん断剛性と強度→ひび割れ、降伏、圧壊を考慮して定める。



上記で⑦の「せん断力」では圧縮ストラットの抵抗による「アーチ作用」と、せん断補強筋の

引張力により抵抗する「トラス作用」の2つの反作用で抵抗すると考えられています。

尚、柱や梁のせん断終局強度の下限値の式での右辺の第1項の係数は、

「0.053」を「0.068」で置き換えた場合、下限値に代わり平均的なせん断終局強度として評価されます。

この係数値は、室蘭工業大学の名誉教授である荒川卓Drの献身的な研究によるものであり

先人のたゆまぬ努力に感謝いたしましょう。

掲載日:2012年12月21日

≪第5回≫鉄筋コンクリート造を考える(その5)

 引き続き「部材の変形性能」を解説して参りますが、少し難易度が高いです。

「柱・梁」において、曲げ降伏後の破壊要因から辿り着くものは「変形性能」である。

「柱=D」の場合、水平変形δを生じさせる水平力が加力された時、部材長hとすれば

部材角R=δ / hとなる変形状態を示し、モーメントM分布も反曲点を0.5とするならば

柱頭と柱脚に逆対象の曲げモーメントMとなり、その柱のせん断力Q=2M / hとなります。

柱が良好な変形性能を示すには、上記の「せん断力Qと部材角Rの関係」に注目して

主筋が降伏する前に「せん断破壊及び付着割裂破壊をさせない」となるのです。

柱において「短柱=h / Dが2以下のもの」を避ける理由は、曲げ降伏以前に「せん断破壊」

となりやすいまです。「せん断破壊」させずに明確に「降伏ヒンジ形成」されるには

h/Dが2程度以上の大きさにしておく必要があるのです。

降伏ヒンジの変形機構では、曲げ降伏後のせん断破壊や早期の付着割裂破壊をさける

ために、せん断力や付着力に対する「余裕度」を持たせる事が重要となります。

降伏ヒンジの形成を考慮していない日本建築学会の終局せん断強度算定式を用いる場合は

このせん断余裕度(終局せん断強度Qsu / 終局曲げ強度時のせん断強度Qmu)を大きくする。

せん断余裕度の大きいものほど、曲げ降伏後にせん断破壊する時の変形が大きくなります。

当然、Q=2M / hにであるなら、終局時もQmu=2Mu / hとなり、Muが大きい程、また

hが小さい程Qmuは大きくなります。

柱や梁の曲げ降伏後の挙動は、ほぼ同様であるが、梁には軸力が作用しない事から

拘束筋を用いなくても変形性能は得られます。梁のせん断設計や部材長が小さい場合は

付着割裂を生じさせないよう十分に配慮する必要があります。

掲載日:2013年1月15日

≪第6回≫鉄筋コンクリート造を考える(その6)

引き続き、曲げ破壊する柱の限界変形について解説します。

柱の変形性能は、ヒンジ領域のコンクリートの圧縮特性と軸力の大きさに依存します。

コンクリートの圧縮特性は、最大耐力以後急激に耐力低下する「かぶり部分」と、せん断

補強筋によってX軸・Y軸・Z軸の圧縮状態で拘束を受けている「コア部分」で大きく

その内容が異なります。コア部分は拘束効果を受ける「拘束コンクリート」でもあり

柱の変形性能を高めるのに重要な部位であり、せん断補強筋(HOOP)・中子筋のほかに

フック付HOOPの代わりに高強度の溶接閉鎖型のせん断補強筋も用いる場合もあります。

これらは特に柱の軸力比(=N / b・D・Fc)が大きい場合には変形性能に寄与するのです。

「耐震壁」の変形性状は、その形状(H、L)とAi分布が大きく影響します。

壁脚部が曲げ降伏した場合の変形状態は、「圧縮側柱の柱脚を回転中心とした片足立ち」の

状態です。耐震壁の曲げ降伏後の限界変形を決定する要因は、「曲げ降伏後のせん断破壊」や

「曲げ(圧縮側)破壊」である。また、曲げ降伏後のせん断破壊はヒンジ部材のせん断強度が

降伏ヒンジの変形とともに低下する事によって生じます。

「保証設計」は、想定した建物モデル化にて抵抗メカニズムの推定と同様に構造体として

塑性域の挙動を保証させるものです。「余裕のある強度を持たせる」とは、

各部材のせん断破壊や付着割裂破壊、圧縮破壊など黄色本P-362にある「脆性破壊」を避けるために

設計応力に対して部材が十分な強度を保有するに他なりません。

地震動の不確定さ、復元力特性のばらつき、解析モデルの起因による現実との乖離、

静・動的解析も同じ、自然現象を全方位(360°)から捉えるなど想定外の言及である。

降伏メカニズムの確保に対して、終局限界状態を想定した変形に十分な変形能力を有する

ことまで「構造設計者」に求めています。

日本建築学会は、二歩も三歩も先を見据え、「限界状態設計指針」や「終局強度設計法」

など工学系の理論推進が益々顕著になってくると考えます。

未曾有の東日本大震災の復興に対して、内田祥三氏と内藤多仲氏の「剛と柔」の構造形式論争ではないが、

行く末を確実に見通せる建築技術者としての「自己研鑽」をされながら

しばらくは、建築行政の施策の推移を見守るしか我々には手立てがないのです。

掲載日:2013年1月26日