MENU
KEI SYSTEM

地震と耐震

(H27年09月05日)

≪第1回≫世の中の推移から(その1)

 未曾有の「極めて稀に発生する地震」である「東日本大震災」を経験して、時間と共に
風化する事への懸念を感じながら、日常の業務に「地震と耐震」を再考する為にも連載の
内容として、あえてこの時期に世の中の推移から論評します。
度重なる地震に対して、「地震動予測」の精力的な研究に感謝しながら、実質的には正確な
予測は不可能とも言われています。であるなら私達建築技術者に求められるのは、新築や
既存を問わず建築物の耐震性の向上であるはずです。
過日、特に活断層の多い沖縄県宮古島市にてセミナーをさせて頂いた折、新築行為に拘ら
ない「減築」の選択肢もある旨を提案いたしました。戦後の高度経済成長から淘汰の時代
を迎え、右肩下がりの経済推移の中では「量より質」の時代に迎合するコンセンサスです。
日本列島は、「島弧」であり「余効変動」という地学用語ですが、「東日本大震災」のあと
三陸沖の地震帯に東に向かってゆっくりと引っ張られて続けています。
特に、その影響と見られる変化として栃木県日光市付近での地震活動が基盤の地形変化で
顕著になっています。
東京大学地震研究所でも「地震計」や「GPS」により国土地理院と情報共有しながらその
地盤の動きに注目しています。「アウターライズ現象」や「活断層の活動度合いの変化」を
追跡調査したり、マグマだまりの上昇に「火山活動」まで守備範囲が広くなっています。
私達の業界では、「地震」に対する方策として「耐震」という文字に代表されるように外力
に抵抗するには限りがある事も事実です。技術立国である我が国では、「耐震」以外にも
「制御技術」の応用による「制震」とか「免震」なども広く採用されています。
特に、大都市部では「超高層建物」に「免震装置」を組込んだ共同住宅も多くなり、今迄
以上に「緊急時の心理不安」の医学的な対応力も必要となっています。大地震時の巨大な
振幅は人間の平衡感覚を司る反射神経機能の不安定が人々の「パニック」となるのです。

掲載日:2013年9月25日

≪第2回≫「島弧列島」の構築物(その2)

 「耐える」、「制御する」、「免れる」を少し深く考えて見ますと、外力と内力の釣合と
いう「基本」に辿り着くはずです。古代ローマの先人達の英知を持っても解決策は見い
だせないのは、「地球」という存在は「万有引力」に支配されているからなのです。
「人類の生命維持」に必要な「衣・食・住」の三要素では生活する気象条件に左右されて外乱から
身を守るのに身近な物を代用しています。赤道に近い場所・回帰線近辺・四季の確認出来る温暖
地・雪や氷結と隣り合わせの極地など「衣・食・住」の三要素の確保にも
地域格差が相当以上あります。我が国でも「島弧」としての列島の長さは、北から南まで約
3200kmもあり緯度も20度程度の違いにより「構築方法」の変化となって「住」の要素が理解出来
ますので、緯度的な論証をして見ます。
北緯20度台あたりでは「メーソンリー形式」として組積造をRC造との補強によって
プリズム強度に依存した「構造物」が圧倒的に多くなります。
地震の過去の記録から見た地域係数Zと関連し、また「蒸暑」とか「台風」などの気象
条件や「建築材料」としての現地調達性の優位から選択されるのでしょう。
北緯30度台あたりでは少し構造形態が変化しております。これは、「建築経済コスト」や「自然現
象」の低確率の突発性をも考慮しながら自重の軽い「軽量構築物」に、「損傷限界」に耐えられる
程度の設計思想が概念的である。
ただ、昨今の「極めて稀な荷重・外力」の襲来に「想定外」との言葉で済むものではない・・・国民の
生命・財産を守る為にも法規制となっています。
この中でも北緯35度付近は、日本列島の心臓部の機能的都市部が集積している。
それだけに、たびたび国家的なビジョンの中に「予備防災」や「都市機能維持」に力点が置かれ、
国家的啓発が行われるのです。
この緯度ゾーンでは、「耐震」「制震」「免震」の各形式構築物が多く見られるのが特徴です。
北緯40度台あたりでは、人々の生産活動に年間1/3程度の制約として「寒冷」「暴風雪」
「凍結」など自然現象の厳しさから、「比重の大きい建築材料」を選択する傾向となります。
「温度制御機能」から構築物には「熱伝導率」を考慮したり、「断熱対策」に真剣な取組み
と同時に、「重量構築物」として「耐震」の基本から逸脱出来なくなるのです。

掲載日:2013年10月5日

≪第3回≫耐震・制震・免震(その3)

 前回、日本列島の緯度による「構築物」に関する地震動の対応要素にあてはめて考えて
見ることなどを述べてきましたが、記事作成中に国から発表されたものがあります。
列島の太平洋側に位置する「南海トラフ巨大地震対策」に関するものです。
以下毎日新聞から記事を引用しています。

国の中央防災会議の作業部会「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」(WG)
は18日、南海トラフ巨大地震に伴う経済やライフライン、交通など第2次の被害想定を
公表した。被害額は計220兆円で従来想定の約3倍、国家予算の2倍超。ピーク時の断
水被害人口3440万人▽停電2710万件(契約数)▽避難者950万人--と推計さ
れた。被災する可能性のある人口は国民の過半数の6800万人に上り、中・西日本の太
平洋側の住民が深刻な被害を受ける。(毎日新聞)

この記事から、「建築物の被害」も地震動に対する措置をすれば「被害額も半減する」との
予測があります。新築ではなく、国民の財産である既存建物に対する措置の取り方であり
国民の生命を守るものです。「明日、来るかも知れない巨大地震」。
「耐震」・「制震」・「免震」を既設建物へどのように取り入れるか、またどの震動対応措置
が望ましいのかに論点があります。
「耐震診断」を終えて、「耐震補強改修」をする場合、事業費等も膨大となります。その中
では、「強度」とか、「靱性」対応であったり、その両者を合成した対応もあります。
施工費を考えれば、後付けとなる選択肢が多く、「耐震」・「制震」指向が中心となります。
「免震」は、部分的に組み入れは可能であるが、構築物全体となれば対応しづらくなる。
在来軸組み工法住宅は、毎年着工戸数の半数以上占めており、既存建物の対応が中心では
あるが、社会的な基盤建物にも深刻な影響もあります。
防災意識と同時に、建築技術者として看過出来ない部分がある場合には提言も必要です。
ただ単に、「新築」など床面積を増やすとか「耐震」での補強ばかりでなく、「減築」と
いう選択肢をもっと真剣に取り入れるべきと思います。

掲載日:2013年10月15日

≪第4回≫地殻変動から(その4)

 東日本大震災の時、被害の多かった「地盤の液状化」について考えてみましょう。
千葉県浦安市の沿岸地では甚大な被害が出ていました。黄色本などに記載されている
「液状化の発生指標」や「液状化の危険度」など改めて技術者は考えさせられるものです。
内陸部の盆地の地形状態である「表層地盤」でも「境界領域」など顕著な「液状化」の
被害も見られています。社会資本にも大きな被害となり「生活基盤」の復旧・復興に対し
莫大な負担が出て参ります。「国土強靭化」が言われるのも当然かも知れません。
東日本大震災のあと、列島の余効変動による「地殻のひずみ調整」はそう簡単には終わら
ない・・・と地質学者も述べられています。
そのような、「余震」と言っても極めて稀と見られるような地震動となって表層地盤に
せん断波が通過すれば、また「液状化」となりこの「液状化現象」は一度とは限りません。
地盤が水による飽和状態から加速度が加われば、その「せん断抵抗力」を失います。
その地盤が「砂質土」であれば尚更であり、シルト質地盤でも被害は見られました。
液状化対策として「改良工法」は、「地盤」あるいは「基礎地業」がありその工法には
適切な工法選択をする必要がある。しかし、対策費用も範囲も限りがありません。
法律がどうの、こうの・・・と言っても現実に「居住出来ない」「使用出来ない」ものは
社会資本・財産価値を失ってしまいます。国は、個人所有物に対して「税金投入」は当然
いたしません。何か、社会の機構・システム・仕組みの中で「無用な税金投入」された
事例・事案を見るにつけ疑心もあると考える方もあると思います。
日本列島は4つの巨大な地殻フレートに複雑に挟まれ、造山運動の中において「海溝」が
隣接した位置に陸地として隆起したものです。その隆起状態の中に凹凸の変化があったり
火山の噴火による灰土に長年堆積された場所とか、嶺からの風化などによる土石流で埋め
尽された「扇状地」などに、人々が「水」と関わりながら「衣・食・住」の根幹をなしな
がら生活しているのです。

掲載日:2013年10月25日

≪第5回≫長周期地震動(その5)

 現在、我が国では高さ60mを超える建物は「超高層」と呼んでいます。今では300mを
超えるものまで出現し、その棟数は2500棟以上あります。
これらの「超高層建物」に一番心配なのは、「共振現象」なのです。すなわち、建物の持つ
固有周期と地盤の固有周期が一致した時、とてつもない「ブロッシング=ムチ振り」の応答
を建物が示します。研究途上にある「応答制御技術」の中で「可変応答制御」が注目され
コンピュータ制御による「振幅の抑制」があります。一般の大臣認定では「クライテリア」
を定めて、それ以下に時刻歴応答を確保しているにすぎません。
一般的な「長周期」とは4~20秒と広範囲なものとして捉えています。「変位」や「速度」
の応答量に「共振現象」を加味することなく建設され続ける「超高層建物」です。
「ファジィ」な論理も必要かも知れませんが、定量的に捉え難いものに対しての取組みは
少なからず先端技術応用の要となると思います。
人工的知能を持った「周期調整・制御装置」が出現してくれば、「共振」も回避可能です。
最近、多くなった「共同住宅」等の「免震超高層建物」で用いられている「免震層」の
研究において、出隅部の浮上り対処用に「特殊な追随能力」を持たせたものまで現われて
おり「特許」出願も多くなっています。立体的な耐震要素を「アトランダム配置」する等
臨機応変な構造計画であったり、浮上り抑止に対策を講じるべく「冗長制御」なのです。
地震基盤のひずみ予知は不可能に近い現状では、いかに「共振」を避けるかになります。
阪神・淡路大震災、東日本大震災の時に各地の「超高層建物内部」で見られた被害内容
から対応策として「地震計」による振幅記録から、ダンパーの追加設置とか「強靭化」策
が考えられており、当初の「クライテリア」の格上げとなっています。

掲載日:2013年11月5日

≪第6回≫建築技術者のあるべき姿(その6)

 関東大震災のあと、時の「復興院」は内田Drと内藤Drに「地震に強い」建物の
提案をさせました。どちらも提案として素晴らしいのですが、時の「復興院」は「建築
経済コスト」に天秤をかけ、内藤多仲Drの「耐震壁理論」が採用されて今の建築基準法
の源流となっています。
「柔」か「剛」の論理なのですが、水平な外力に対して「強度」で耐える仕組みの方が
「靱性」で対抗するより安全で安価であるとの結論だったのです。
今の時代、「復興庁」とかの組織により25兆円とも言われる「東日本大震災」の復興に
対して、「構造計画」ではなく社会基盤のあり方が先行しています。
それは、もちろん「津波」であり「エネルギー」との兼ね合いがキーポイントとなり
湾岸・沿岸地の建築行為をどうするのか・・・議論はあったものの、「経済再生」が鍵。
津波の予想高さによっては「防波」では対応出来ず、地盤そのものを嵩上げとか高い
位置への生活拠点移動にならざるを得ないのです。
東北地方では、内陸部に移住する方が増えているようです。標高の高い場所への社会
基盤整備となれば「国家対応」とならざるを得ません。
少なくとも、私達「建築技術者」として「対 / 地震」に真剣に取組む姿勢が必要であり
建築の三要素である「用・強・美」を今一度しっかり考え直す時期でしょう。
「意匠が専門です」とか「構造はわかりません」と言わない建築士であるべきです。
そのことが、「住」をまかなう私達「建築技術者」の科せられた使命と思います。

掲載日:2013年11月15日