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コンクリートのひび割れれ

(H27年09月05日)

沖縄県での思い出 (その1)

過去5年間、「構造のご支援」を「ライフワーク」に偶数月に本土との往来の中、主に建築材料として「コンクリート」を多用している「沖縄県」での「学び」の中から感じたり、見えてきたものから、「コンクリートのひび割れ」としてシリーズで論評します。

この地で「ひび割れを考える」をテーマにセミナー開催させて頂きましたが、その際に公益社団法人沖縄県建築士会の事務局長から、コンクリートに関して「県内の技術者」の知識レベルは高いとの耳打ちもあり、解説レベルを上げて「定員」に近い状態でした。
そのセミナー内容をご紹介します。サブテーマは「RC造の宿命は、ひび割れ・・・」
 
偶数月にご支援の「沖縄県」では圧倒的に鉄筋コンクリート造(RC造)が多い。
今回、この中で気付いた鉄筋コンクリートの『ひび割れ』について共に考えましょう。
確かに、「コンクリートにはひび割れが宿命」なのかも知れません。
「離島」では、特殊な建築材料(法第37条に規定も含む)を採用すれば、本土からの「船便」となり「足らなくても余っても困る」のです。その点、コンク リートは安価な材料であり必要量の現地生産が可能な建築材料です。『ひび割れ対策』として多額の費用をかけるより、生じたひび割れを補修するほうが安く済 むのが実態でしょう。

改めて「ひび割れ(crack)」の定義とは、
き裂であり、物体の変形能力を超えた変形を受けて生じる部分的な割れです。
この「ひび割れ(crack)」には、「初期ひび割れ」と「長期ひび割れ」があります。
日本建築学会編集の「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」では壁の収縮ひび割れに関して、鉄筋によりひび割れ幅を 0.3mmに制御するためには壁の最少鉄筋比0.4%では少なく、Pt = 0.5~0.6%の鉄筋が必要であるとしています。

このセミナーでは、まず「初期ひび割れの発生メカニズム」及び「構築物の品質確保」や「事前の対策」と「ひび割れの影響」など建築技術者として正しく理解 して欲しいのです。「初期ひび割れ」と「長期ひび割れ」がある中、発生時期から「まだ固まらない時期」と「構造物として供用の時期」に大別される。当然、 使用時間と共に「劣化現象」もある。自然現象(温度変化、地震等)による環境など各種要因もあり定量的に捉え難いのです。

「初期段階」に限定してその要因は、多岐にわたり私達建築技術者として設計の段階から配慮するものもあります。この「RC造」の長期使用の耐久性を考える と、「スクラップ&エコロジーリビルド」には「破壊させにくく、再生にも問題が残る」。それは、「粗細骨材」と「セメント」の分類において微粉な 「セメント」は産業廃棄物でもあるのです。
しかし再生骨材は、地域により異なりますが500円/ton程度で商取引されています。
「ひび割れを設計者が考える」として事前の対策や配慮を考察して初期ひび割れに対する「発生メカニズム」を理解して頂き「実務での対応」を解説して参ります。

沖縄県での思い出 (その2)

引き続き、そのセミナー内容です。サブテーマはひび割れ発生のメカニズム(基本編)

「コンクリート」は耐久性に優れ、かつ人工的な岩石と呼ばれる。この材料は丈夫で
長い期間性能を維持し、かつ安価ですが大きな欠点もあります。
それは「引張の抵抗力」に対して小さいメカニズムにある。逆に「曲げ能力」が小さく
引張応力を鉄筋などの鋼材に負担させて、「圧縮応力」をコンクリートに負担する。
梁部材に生じる「ひび割れの概念」を「単純ばり」で見ると、中央の下部に「応力線と
直交方向」に劣化因子である「ひび割れ」を理解出来ます。我が国のように地震多発の場合、建築物では壁量や柱量の多寡(たか)による「強度指向型」の傾向 が多くなりますが社会資本のひとつでもある「鉄道高架橋の中間梁」などの「靱性指向型」の剛接フレームには「過大な地震力の作用」によって斜め(ハの字 型)せん断ひび割れが報告されている。

鉄筋コンクリートの「せん断破壊」は、地震時の吸収エネルギーが小さく、靱性に乏しく一気に「破壊」とつながるので、近年の設計においてはこの破壊をせず、「曲げ破壊」するように設計段階から考慮しています。
「材料品質」として、
・セメント、骨材、混和材、混和剤、使用水 → 品質管理と確認や配合計画
「工業化による製造」として、
・凝結遅延、未固化、計量や練り混ぜ過不足、運搬時間 → 品質管理と経過時間の確認
「現場打設」として、
・打込みと締固め、振動、収縮と沈下の養生や仕上げ → 施工計画と管理の再確認
「打設の直後」として、
・型枠の脱存、凍結や温度応力、収縮と不同沈下 → 強度発現の確認、湿潤や保湿養生

上記では、材料選定や配合計画等による事前に「ひび割れ対応」を検討することになる。これらについて次に起因内容を順追って解説します。
寒冷地におけるコンクリート工事に関して、北海道立総合研究機構北方総合研究所に勤務されている「谷口円」先生は、RC造の躯体に用いる「普通ポルトラン ドセメント」の寒中工事を可能とする強度予測手法の高度化では東京都市大学とも交流があり室蘭工業大学の学位論文では「各種セメントを用いたコンクリート 強度増進性状に及ぼす温度・時間影響に関する研究」をされて、少し専門的な事ですが、従来のロジスティック曲線よりも初期強度の適合性が高く曲線変化の時 間的対象性のある「ゴンペルツ曲線」が強度増進の成長曲線として適するなど、氷点下を含む温度範囲での強度増進予測を可能にされています。

沖縄県での思い出 (その3)

引き続き、そのセミナー内容です。サブテーマはひび割れ発生のメカニズム(設計編)

ひび割れの起因内容を以下に設計上とか施工時、供用中に応じて解説いたします。
「乾燥収縮ひび割れ」についてであるが、一般に鉄筋コンクリート系の部材にはコンク
リートの乾燥収縮によるひび割れが少なからず発生します。
この乾燥収縮によるひび割れは、不規則に発生しやすくこれを制御するのに「誘発目地」により特定の位置に集中させる目的で設けるものもあります。
一般的には、外壁で3m、腰壁・垂れ壁・パラペット等で1m、土間コンクリートなど床面では5m内外に設置が多いです。

構造耐力上主要な「柱・梁」の場合、最大曲げモーメントMと最大せん断力Qの比である「シアスパンα=M / Q」はせん断力が一定と見なすことが出来る区間である。
この「シアスパンα」を「有効せいd」で除した値(M / Qd)であるせん断スパン比がRC造の部材において「せん断耐力と塑性域における変形性状」に影響を及ぼします。
この比が小さいほど耐力は大きくなりますが、靱性は低下します。ですから、学会規準でひび割れ荷重及び破壊荷重の増加を割増し係数αで下記のように与えているのです。

α = 4 / {(M / Qd)+1} ただし、1≦α≦2

どちらになっても「設計段階」では、何らかの配慮は必要である。
そこで、様々な要因から「ひび割れ」を考えて見ますと「外力」や「材料・配合」等の
起因するものもある。「外力」とは過大な地震作用であり、「材料・配合」であれば施工
段階での使用セメントの種類とか水セメント比や単位水量の調整不足でしょう。
乾燥収縮や温度変化のひび割れは、制御の難しさに直面します。

この制御の難易にしている「乾燥収縮ひび割れ」ではセメントの水和反応時の水量に
大きく依存され、セメントペーストが硬化後に乾燥した環境では大きく収縮してしまう。骨材は、その収縮に抵抗する性質を持つので、「骨材量」による配合面 の配慮となる。しかし、コンクリートは打設後に微小な収縮を生じてしまうのでひび割れに直結する。また、水和反応で硬化して強度を出す為に、水和による発 熱は避けられません。
温度変化のひび割れについては、発熱速度が部材の厚さ等にもよるがコンクリート表面からの放熱速度より速く内部に蓄積されてしまいす。材齢2日頃の部材の 温度上昇(約60℃)となり軟化状態から硬化へ進行する過程において、温度降下時の収縮が「温度ひび割れ」として生じる。

他にも「沈下ひび割れ」と呼ばれる内部の水が硬化中に骨材間をすり抜けてコンクリートの上面まで上昇する「ブリージング現象」があります。
上昇した水量の分だけ、コンクリート表面が沈下して鉄筋・鋼材等の下面に空隙が形成されて表面にはひび割れを生じさせてしまいます。

沖縄県での思い出 (その4)

引き続き、そのセミナー内容です。サブテーマはひび割れ発生のメカニズム(施工編)

ひび割れの起因内容を設計上につき述べたので施工時について解説いたします。
「塑性ひび割れ」についてであるが、コンクリートが凝結や硬化していない段階で
その表面がきつい日差し(日射)や風(特に塩分の多い海風)を受けると乾燥する。
その時、生じる「収縮の動き」に内部のコンクリートが追随出来ないので、「ひび割れ」に至る「プラスチック現象状態」なのです。適度な水分上昇の「ブリージング現象」が
あれば表面からの逸散水より内部からの浮上水の多い状態となりひび割れにならないので夏場の日差し(日射)で乾燥しやすい時期とか、風(特に塩分の多い海風)を受けやすいなど環境下を考慮したコンクリート表面を乾燥させない配慮の必要性があります。

コンクリートの打設では「打ち重ね」がネックとなります。レディミクストコンクリートを運搬する「アジテータ・トラック」が30分以内に工場から現場へ到達させる配車等で
充分考慮しても「打ち重ね部」の一体化にならない「コールドジョイント」が出来る。
「コールドジョイント」に沿った隙間に問題があるのです。
以前にセミナーでもお話しましたが、最近ではミキサードラムの保温用にドラムを包む
特殊シートが開発され販売(約15万円程度)もされています。
劣化因子の浸入経路となりやすく、打ち重ね時間の間隔も施工管理の中では重要な項目であり気温25℃を超える場合、2時間が上限であり25℃以下でも2.5時間が限界である。

コンクリートは流動物である以上、硬化するまでは「型枠」に側圧が作用します。
当然、型枠はそれに抵抗しサポート等支保工は弛緩してはならないのです。
コンクリート打ち込み中に型枠やサポート等支保工が緩むと、硬化し始めたコンクリートに変形が生じてひび割れが発生する。特にコンパネの面外変形には注意を要します。

施工時の不備により、様々な初期の欠陥は取り返しが付かなくなります。
型枠の転用回数に起因する「砂すじ、豆板」等の初期欠陥は型枠からの漏水が原因であり施工会社の信用問題にもつながります。また、工事中には予期せぬ荷重 が作用することも考慮しなければならず、打ち込み順序によるサポート等支保工位置に絡む工事進行による後打ちコンクリートによるひび割れが生じる場合もあ ります。
また、型枠やサポート等支保工に偏心荷重が載荷されたり、不十分な締固め・施工時の振動や地盤の不同沈下などもあり支保工の変形には施工上の管理が必要となります。

沖縄県での思い出 (その5)

引き続き、そのセミナー内容です。サブテーマはひび割れ発生のメカニズム(供用編)

施工編でも述べたように「塩分によるひび割れ」が日本のような島国では避けて通れない。塩害の主要な要因は、「塩化物イオン」である。コンクリート製造段階での「内部要因」でであったり、外部からもたらされる(潮風等)塩化物イオンなのです。
JIS規格のレディミクストコンクリート生産工場にあっては、骨材の洗浄に充分な配慮を遵守されているはずである。フレッシュコンクリート(生コン)中に 含まれる塩化物イオン量は1立方メートルにつき0.3kgに制限されているので、一般には部材内部の鋼材が腐食してひび割れを生じることはないはずであ る。業界の倫理観にゆだねる以外にありません。
また、塩害の外部要因である場合はコンクリート表面から塩化物イオンの浸入である。

ひび割れが発生するのは、鋼材近傍の塩化物イオン濃度が1立方メートルにつき1.2kg以上に達している時に鋼材の腐食と膨張によって「かぶり厚さ」の薄い部分のコンクリートに劣化現象を示す。
島国である日本列島では、山陰、北陸、東北地方の日本海側の冬の季節風が厳しい地域や沖縄県の島嶼地区のように、毎年台風時には潮風と海水を直接建物が被 る場合に大量の塩化物イオンをもたらします。雪国の場合は、路面の凍結防止に「塩化カルシウム」を散布しますがこれも塩化物イオン浸入の原因になります。 気温の極端な低下による「凍害」によるひび割れもあります。
この現象で一番心配なのは「凍結」と「融解」を繰り返す交番的変化がコンクリートの組織を弛緩するのです。レディミクストコンクリートは通常 4.5±1.5%(3~6%)の空気量を求めているのは、凍結や融解作用に対する耐久性を高めるためなのです。材料の品質管理の重要性に理解がいるのは当 然です。

母校である大阪工業大学の故二村誠二先生は、「アルカリシリカ反応」の研究者でした。温厚な先生ではありましたが、阪神・淡路大震災の被害の中で「山陽新幹線の高架橋」の特定区間のみ崩落した「アルカリ骨材反応によるひび割れ」の調査では先駆者でした。
骨材中には、セメント中のアルカリ金属イオンと化学反応して膨張する性質を有する事でひび割れに直結するのです。この「アルカリシリカ反応」は骨材中のシ リカ生成物(SiO2)である鉱物がコンクリート中の高いアルカリ性のpH条件下で、セメント中のナトリウムイオン(Na)やカリウムイオン(K)と化学 反応するものです。この反応を制御する為、使用骨材がシリカ反応性を持つので最近は高炉セメントやフライアッシュセメントを使用する。コンクリート中の総 アルカリ量(NaとK)の少ない場合には有害な膨張反応を生じません。

当然、中性化によるひび割れもあります。コンクリートを高いアルカリ性pHの維持には水酸化ナトリウムが空気中の二酸化炭素と化学反応し、炭酸カルシウムに変化します。
pHが12~8.5程度まで下がると、高いpH条件下の保護で鉄筋は腐食しやすくなる。
コンクリートでは「水セメント比」が鍵を握り、この比の小さなコンクリートの使用が
ひび割れに至りにくくしてくれます。

沖縄県での思い出 (その6)

引き続き、そのセミナー内容です。サブテーマはひび割れ対策とコストを考える

最初に述べたとおり、「コンクリートにはひび割れが宿命」なのかも知れません。
しかし、発注者や建築主には許容しがたいのも事実です。
ひび割れは、物体の可能な変形量を超えるときに生じる部分的な割れであり、それが有害か否かの判断となり「責任の所在」に発展してしまうのです。
荷重が作用したときや、乾燥収縮・膨張したときの内部応力による変化量とか、脱水や温度・湿度変化による体積の変形量などがある限界を超えてしまうと発生してしまう。特に、コンクリートは構造や仕上げへの欠陥に直結し、耐力又は耐久性を低下させます。

対策については、コストと効果の天秤となり高度な工学的な判断となります。
ひび割れの耐久性対策として、「設計段階」「施工段階」「供用時」に分けて解説しましたが防止するとかひび割れ幅を制御するなど、構造物の使用目的や重要度・供用想定年数とか建設環境・所有者の維持方針で大きく影響されるはずです。
ひび割れ誘発目地を設けてみても、その目地部にはひび割れが入らずそれ以外の部分に発生している例は多く見られます。

耐震壁の完全スリットについても「負の効果」は問題提起される。それは、剛性評価の難しさにも起因するが、構造部材でない部材にする事によって「ひび割れ 防止」する。構成部材を流体や固体を統合したモデルとした質量密度のある連続体とすれば、耐震の効果が高まる期待が持てるのです。
しかし、現実には降伏後の剛性評価やひび割れからせん断破壊への進行を考えられてしまうのです。構築物においても、人体の健康管理と同様に「建物管理」にも「目配り」とか「作用・副作用」について合理的かつ適切な工学的な技術者の判断になると考えます。

とりとめもなく、「沖縄県の現状」を見つめていて製造業の皆さんも「ひび割れのない
コンクリート生産」に努力されている事を広報誌で見つけた記憶があります。
ひとり一人の気付きが大きく育つことを願っております。

このような内容の、「沖縄県」のセミナーの後、沖縄本島の2ヶ所の地方自治体からも
様々な「ご支援」させて頂いた事に「感謝」以外ございません。