(R5年5月05日)
崩壊形(その3)
崩壊形(その3)
この連載資料は、昨年の夏(令和4年6月~8月)に長期滞在した北海道紋別郡西興部村のコテージ生活の中で書き下ろしたものです。構造設計の実務や審査で、「崩壊形」に必要となる知識に限定して、情報を開示して参ります。著作権にご注意下さい。
耐震計算(二次設計)の方針で「崩壊形」が出て参ります。
これには、以下3つあります。
(全体崩壊形)-建築物全体に水平力に対して、不安定な状態となるのに十分な塑性ヒンジ
が形成される。
(部分崩壊形)-特定の階に水平力に対して、部分的に不安定な状態となるのに十分な塑性
ヒンジが形成される。
(局部崩壊形)-特定の部材が破壊し、常時荷重に対して架構の一部が耐えられなくなる状態となる。
保有水平耐力は、地上の(地下は適用除外です)上部構造が構造耐力上安全な状態となるように、建築物全体の浮上りによる転倒崩壊形となるものであっても、浮上りはないものとしても上記3つの崩壊形を求めて計算します。
保有水平耐力算定の原則には、以下4つが用意されています。
- 荷重増分解析により計算する場合、想定する外力分布は地震力の作用を近似した水平
方向の外力分布に基づくものとし、原則として「Ai分布に基づく外力分布」とする。
- 地震力と建築物の各部分の応力の「釣合い条件が満たされている」ものであること。
- 建築物の各部分の応力は、どの部分においても「各部材の終局耐力を超えない」こと。
- 建築物が「崩壊形の形成条件」を満たすこと。
ここまで説明すれば、ある程度「骨格・シナリオ」が掴めたはずです。
次回には、更に踏み込んで「外力分布(必要保有水平耐力Qun分布の適用条件)」を説明したり、その先には「保証設計」や「転倒に対する検討」など解説せざるを得なくなります。