(R5年5月25日)
崩壊形(その5)
崩壊形(その5)
この連載資料は、昨年の夏(令和4年6月~8月)に長期滞在した北海道紋別郡西興部村のコテージ生活の中で書き下ろしたものです。構造設計の実務や審査で、「崩壊形」に必要となる知識に限定して、情報を開示して参ります。著作権にご注意下さい。
耐震計算(二次設計)の方針で「崩壊形」に関連して「転倒に対する検討」があります。
これについて、噛み砕いてわかりやすく解説と説明をいたします。
「転倒に対する検討」では、「転倒崩壊形」も論じますので、難易度が高くなります。
法令や告示では、塔状(屛風状・衝立状)態を考えさせます。それが「塔状比」なのです。
「転倒の要因」から、「屛風状」「衝立状」などのスリムな「ペンシルビル」が該当です。
「崩壊形」でも触れましたが、上部構造が構造耐力上安全になるように、建築物全体の
浮上りによる「転倒崩壊形」となる場合であっても、浮上りは生じないものとしています。
だから、「浮上らない」ならば、その措置や検討はどうするのか・・・それが「転倒の検討」になるので、理解できたはずです。残念だが黄色本にはその因果関係に記述はありません。
健全な骨組みを形成させる為に必要なものも見えてくるはずです。そこが「学び」です。
今回の、「転倒崩壊形」の「転倒に対する検討」を論じます。
告示 平19国交告だい594号第4に明記されていますので、以下の解説にいたします。
建築物の地上部分(地下は対象外)の「塔状比(計算しようとする方向における架構の幅に
対する高さの比)」が「4を超える場合」にあっては、標準せん断力係数Coを0.3以上と
した計算、保有水平耐力に相当する層せん断力が生ずる場合に各階に作用するものとした
せん断力の「いずれかが作用する」ものとした場合に、建築物の地盤や基礎ぐい、地盤
アンカーに生ずる力を計算して、「極限支持力を超えない事」を確かめるのです。
「極限支持力」とは、地盤又は杭や地盤アンカーの支え得る最大荷重です。
「塔状比(B/H)」の計算においては、建築物全体の形状をよく理解し「見つけ幅B」や
「地震力算定用高さH」の取り扱いにも留意する必要があります。
最終回は、「異国の地で苦しまれた異国の先生」の「崩壊形」の学び方で結論とします。