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耐力壁のせん断破壊

(H27年11月25日)

壁の役割(その1)

建築基準法令集「告示編」に注目・・・告示平19国交告第594号第4第三号ハです。

 

鉄筋コンクリート造の架構にあっては、使用する部分及び第一号の計算を行う場合に

おける部材(せん断破壊を生じないものとした部材に限る。)の状態に応じ、次の表の式に

よって構造耐力上主要な部分にせん断破壊を生じないことを確かめること。

 

ただし書きは、省略していますがこれが告示文です。そこで、今一度定義してみますと

鉄筋コンクリート造の架構の構造耐力上主要な部分として「柱」「はり」「耐力壁」など

せん断破壊を生じないことを確かめる訳ですが、( )内の文章に注目すると意味が解る。

改めて、学びの基礎を復習してみます。

「柱」とは屋根や床の荷重を支え、基礎に伝える役割をもつ鉛直部材であり、はりと

協力して水平力に対しても抵抗する。

「はり」とは支点上にある水平材で、曲げモーメントとせん断力を受ける材であり、床

荷重を柱に伝達すると共に、柱と協力して水平力に抵抗する。

「耐力壁」とは鉛直荷重又は水平荷重に抵抗させる目的の構造壁体である。

 

第一号の計算=保有水平耐力の計算を行う場合における部材の状態に応じとは

荷重増分解析法による計算過程を論じなければなりません。

荷重を徐々に増やす(漸増させる)→いずれかの階の耐力壁がせん断耐力に達する

せん断耐力に達する→せん断破壊した→崩壊メカニズムが形成された

この挙動サイクルの中で「柱」「はり」「耐力壁」のうち

(せん断破壊を生じないものとした部材に限る。)ものとして、せん断破壊した耐力壁以外

の部材であるその他の「柱」「はり」「耐力壁」が先行してせん断破壊させない保証設計が

必要となるのです。これがこの告示文の述べているものです。

 

(H27年12月05日)

壁の役割(その2)

我が国のような地震荷重が大きい地域(環太平洋地域)では、耐力(震)壁は重要な役割

をもっている。ここでは、地震に対するものとして「耐震壁」と表現します。

特にRC造建物では強度を可能な限り大きく確保する「強度型」で耐えて変形の小さい

構造形式が「強度抵抗型」のゆえんである。

耐震壁の弾塑性挙動として論じると、一般的な「耐震壁」は壁板とそれを取り囲む付帯

剛節架構(ラーメン)からなります。この壁板は大きな剛性と耐力を有しており、水平入力

する地震エネルギーに集中して抵抗要素となり剛性や耐力評価を適切に行う必要がある。

 

告示の「せん断破壊を生じないものした部材に限る」については、崩壊メカニズム形成に

至る際のせん断破壊した部材とは異なります。この部材こそ、塑性流動中の材である。

従って、異なる部材にはせん断破壊を生じさせないために「保証設計(余裕度割増し)」を

する必要がある。これが強度を可能な限り大きく確保する「強度型」を意味します。

また、告示文では「せん断破壊した部材」は、保証設計(余裕度割増し)をする必要はなく

そのまま扱います。せん断破壊を許し、保証設計(余裕度割増し)をしない部材がある。

何か疑心を感じますが「せん断破壊の呪縛」から逃げられない建築物が存在するからです。

「崩壊するまで加力する」と結局、いずれかの層の壁がせん断破壊となります。

 

 

 

(H27年12月15日)

壁が壊れる(その3)

耐震壁の耐力限界から「せん断破壊に対する耐力モード」の役割を論ずる。

せん断力に対して、壁板の果たすせん断抵抗の役割が大きい。壁板部分にはX形筋かいの

力学モデルにより引張力と圧縮力を負担し抵抗している。斜め引張力による「ひび割れ」が生じなければ、壁板のコンクリートはせん断力の大半を受け持つ。

せん断力が漸増すると、斜め引張力による「せん断ひび割れ」が発生し、コンクリートが

負担していた斜め引張力は壁板の縦筋と横筋が分力を負担するとなり、連層の場合には

中間梁の主筋も水平方向の分力をも負担する。

応力場の形成となるには、これらの分力と壁板コンクリートの斜め圧縮力がせん断力と

釣合う事で水平力に抵抗していることである。

壁板に斜めひび割れが生じた後、せん断力の漸増によって壁板部分のコンクリートが

「せん断破壊」するのです。この破壊こそ、避けなければならない「脆性破壊」である。

「曲げ降伏前」にこのせん断破壊が生じる場合、耐震壁の変形はかなり小さいので出来る限り避けるのが望ましいのです。

また、「X形配筋」に関する知見として論評する。

並立するRC造耐震壁とそれを連結する境界梁で構成される構造形式では、RC境界梁の

せん断破壊が顕著である。1964年アラスカ地震被害から、RC境界梁の弾塑性挙動が注目され

1971年にニュージーランド・カンタペリー大学のトーマスポーレー(Tomas Paulay)教授が

「X形配筋」を用いることによってその変形性状が改善されることを初めて提案した。

 「X形配筋」は、引張主筋量が多くなっても付着割裂が生じにくく、短スパン梁(境界梁)でも

 X形配筋を適用すれば、曲げ破壊させることができ、その効果を十分に発揮する。

 

 

 

(H27年12月25日)

壁が壊れる(その4)

崩壊メカニズムが形成するまで荷重増分(漸増)する事を俗に「押し切る設計=プッシュ

オーバー解析」と言います。耐力壁方向の解析では、せん断破壊等の脆性破壊を許す設計

においても「崩壊メカニズムが形成するまで荷重増分(漸増)する」が基本です。

壁がせん断破壊する時点で層崩壊=すなわち崩壊メカニズムが形成です。

告示による保有水平耐力の計算における部材の状態に応じ、とある脆性破壊を許す設計

ならば層崩壊となる脆性破壊時の応力状態は得られています。

壁の役割(その2)にもあるように、耐力壁方向の基本的な考え方を述べた通りであるが

RC造建物では強度を可能な限り大きく確保する「強度型」で耐えて変形の小さい構造

形式が「強度抵抗型」のゆえんである。

せん断破壊=脆性破壊なので、構造設計上は嫌悪されるが連層壁の対応では異なります。

上記にあるように、靱性を期待せず「強度型」の耐力でありその大きさです。

強度で耐えて、Qunを超えるQuを持たせる事で想定する地震力では壁のせん断破壊に

よる崩壊には至らせない基本的な設計思想です。

実務では、一貫計算ソフトにおいて判断しないのが「壁がせん断破壊して層崩壊している」との項目です。これは構造設計者が工学的な判断をするものです。

この大切な事柄に関して注意喚起が必要です。

 

 

 

 

(H28年01月05日)

保証設計(その5)

2015年黄色本では、RC造部材のせん断破壊防止(保証設計)につきP-401に触れて

おり、2007年と異なる部分もあります。具体的には、Ds算定時の応力状態の他に保有

水平耐力時のせん断破壊防止(保証設計)に対しても同様の保証設計を行う。なのです。

RC造部材の・・・と言っている以上、「柱」「はり」「耐力壁」などが該当します。

この論評では、「耐力壁のせん断破壊」シリーズなので「耐力壁」を取り上げます。

2015年黄色本P-401にあるように

柱及び耐力壁の設計用せん断力= QDC

QDC = n・QM です。ここで、保有水平耐力時のせん断力= QMです。

せん断破壊防止(保証設計)の要となる割増し係数 = nです。

柱及び耐力壁は、いくら割増せばよいのか・・・n= 1.25以上なのです。

ですから、一貫計算ソフトでは「保証設計とせん断破壊判定」においてn=1.25の値を

用いた保証設計用せん断力と部材のせん断耐力を比較して判定しているのです。

 

一番困るのが「保証設計満足しない」場合・・・「満足する部材」に変更出来ない。

この場合、せん断補強が出来ないくらい応力集中が発生しているのですから、即時に

「構造計画」の「フィードバック」につながります。

「保証設計満足せず」→破壊モードは「せん断破壊」→部材種別Dランク→Qu計算。

しかし、「保証設計満足せず」と出力された崩壊メカニズム形成に寄与したせん断破壊部材

とは異なる部材に「せん断破壊を生じさせないために保証設計」をすることが告示にある。

その告示とは、(その1)にある 平19国交告第594号第4第三号ハ です。

だから、設計変更となって「構造計画」の「フィードバック」になるのです。

 

(H28年01月15日)

保証設計(その6)

2015年黄色本では、ピロティ形式の建築物にも耐力壁をせん断破壊させないための

せん断設計方法につきP-703に触れており、2007年と異なる部分もあります。

具体的には、崩壊メカニズム時のせん断力に対し外力分布としてAi分布とともに等分布

を考慮した場合の余裕率は1.2、Ai分布のみを考慮した場合の余裕率は1.55を持たせる。

このせん断余裕度は、ピロティ階での層崩壊形を許容しない設計方針が、ピロティ階の

層崩壊形及び全体崩壊形を許容する設計法に準拠しますので、双方とも同じなのです。

耐力壁の検討ポイントとして

・崩壊形式→1階壁脚が曲げ破壊となる崩壊形とする。

・崩壊メカニズム時に生じるせん断力に対して、せん断余裕度を確保している。

・平均せん断応力度が所定の部材性能を満足している事を確認する。

耐力壁のせん断設計の留意点として

・耐震壁→せん断強度高めるためせん断補強筋を増やす→壁の曲げ強度が上昇→崩壊

 メカニズム時のせん断力が大きくなる⇒「いたちごっこ」

・せん断設計→崩壊メカニズム時のせん断力、設計用せん断力、せん断終局強度の

バランスを考えた補強設計⇒「構造計画のフィードバック」

・連層耐力壁脚部→大きな転倒モーメント→基礎の浮き上がり⇒「回転変形を考慮」

言葉の定義として2015年黄色本ではP-341、P-391、P-394に触れています。

「保有水平耐力時」→上部構造の終局状態

「崩壊メカニズム時(Ds算定時)」→崩壊形が形成された時点

「Ds算定時」→階が崩壊形に達する場合

「余耐力法」→荷重増分解析の部材応力と部材耐力をもとに崩壊形を求める方法

耐力壁に関して、一貫計算ソフトでは(メーカーによりニュアンスは多少異なる)

「保有水平耐力時」→壁がせん断破壊して層崩壊時、又は浮き上がり崩壊時

「崩壊メカニズム時」→余耐力法組み込み後は、壁がせん断破壊して層崩壊時

「保証設計時」→Ds算定時×保証設計用割増し係数

「Ds算定時崩壊メカニズム時」→ラーメン部分の未崩壊層に余耐力法組み込み全体崩壊時

      ↳※大臣認定プログラム仕様にて定義(既存の非認定プログラムも同じ出力)

耐力壁以外の「純ピロティ柱の場合」は、ピロティ階の耐震要素として余裕を持った設計とし、層崩壊形及び全体崩壊形を許容する設計法に準拠し、余裕率は設計用せん断力の1.4以上とする。