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木造建築物の合理化を考える 

(R3年10月15日)

最近の法改正と世間動向(その1)

最近の法改正と世間動向(その1)

新型コロナウイルスの感染が始まる以前の平成30年6月27日公布の法律がある。

「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)」がそれである。

年号が「令和」となる前に立法府として国会の議決承認となったものであり、その概要が概ね、以下である。

「背景・必要性」は、政権与党の政治パーティーによる「政調会」で議論されて中央官僚に委ねたものと映る。何故なら、政治家は「あらすじと骨格」だけ示し、作文は事務官使に丸投げが常套手段となっているからである。法律の一字一句、すべては別部局である「内閣法制局」の検閲もある。国会での「質疑応答」など事前に「擦り合わせ」の「言葉のセレモニー」に見えてしまう。議員提案となる「法案」の少ない事に嘆くはずである。

 各支持団体からの「陳情合戦」の結果が、木造建築を巡る多様なニーズの対応となる。

日本列島の航空写真を見ると、国土の約85%程度が「山林」であり木材活用ニーズの対応は当然のように「地域資源」を活用した「地域振興」を図る施策です。

 各地の「森林組合」などの諸団体に推薦されている議員には、資源活用と植林・防災との調和を図りながら、裾野の広い労働者も抱える「木造建築物」の整備の円滑化を通じて

木造に対する多様な消費者ニーズに対応する必要性がある。

 今回の法改正では、「中層木造共同住宅」など木造建築物を推進し、防火改修・建替え等を促進としている。世間の動向を見据えたものと映ります。

項目を上げると、以下である。

・耐火構造等とすべき木造建築物の対象を見直し。

(高さ13m・軒高9m超 → 高さ16m超・階数4以上)

・上記の規制を受ける場合についても、木材のあらわし等の耐火構造以外の構造を可能と

 する基準を見直し。

・防火地域・準防火地域内において高い延焼防止性能が求められる建築物についても、

内部の壁・柱等において更なる木材利用が可能となるよう基準を見直し。

このような内容が1年以内に施行されて現在に至っているのです。

さらに、これを促進する令和3年6月に成立・交付された「公共建築物等における木材の

利用の促進に関する法律の一部を改正法律(令和3年10月1日)施行があります。

 

(R3年10月25日)

最近版「構1講習会テキスト」の変化(その2)

最近版「構1講習会テキスト」の変化(その2)

新型コロナウイルスの感染拡大等で対面講習が難しく、各種検定考査にも影響を落としているが、「構造設計一級建築士の講習会テキスト」の対応もご多分に漏れず、「web講習」となり、IT機器に翻弄されている。本来あるべき姿は、法改正してでも国土交通省自身が「公僕」として奉仕すべきものである。仕組まれた「政令」に外郭団体が寄り添い既に

制度の疲労や形骸化が目に付くのは衆知の事実で、利権放棄の政変でないと解決はない。

さて、過日今年度(令和3年度)の最新版「構造設計一級建築士の講習会テキスト」の抜粋として、第3章「構造設計各論」第1節「木造」を見る機会に恵まれました。感謝です。その記述の中です。当然のこと前回の論評にある「中層木造共同住宅」など木造建築物の推進に合わせた内容なのです。そうなると、「考査対策」に重要視せざるを得なくなる。

 耐震偽装事件から始まったこの「構造設計一級建築士制度」も既に14年となります。

過去に様々な「人生ドラマ」を見ており、あるべき姿を希求すれば結論はおのずと見える。

構造計算の出来ない一級建築士は、社会に通用しない・・・だからこそ、当方の活動は

「滅私奉公」と揶揄されても「ボランティア」としての「構造支援」なのです。

大きな組織の各種受験学院とは一線を介して「羅針盤」が異なります。

 「去る者は追わず来る者は拒まず」・・・「学びに終着駅なし」これが信条です。

 最新版「構1講習会テキスト」の変化では、まず「CLT」の記述である。

2018年改訂版から3年間は記述変更なく、今回は平成30年法律第67号を反映している。

だからこそ、講習会テキストの記述変化をしっかりと読み取れる方のみ「朗報」がある。

この「CLT」についての詳細を次回論じます。

 

(R3年11月05日)

最新版「構1講習会テキストの変化8その3)

最新版「構1講習会テキスト」の変化(その3)

前回の最後に述べた「CLT」の記述です。2018年改訂版と対比するとその違いも理解

出来て、何を学ぶのかも見えてきます。そこに「一筋の光」を当てて論評します。

「構1修了考査」の受験対策にもなりますので、しっかりと「捕捉」してスキルアップ

して今後伸びて来るであろう「木造建築物の方向性」を捉えて職能として頂きたいです。

以下が「CLT」の記述の要点やポイントである。

「CLT」/ 直交集成板である。← 平25農林水告第3079号(JAS)

「強度」/ 平13国交告第1024号で与えられている。

「仕組み」/ 板厚30㎜程度のひき板(ラミナ) を層ごとに繊維方向と直交方向の交互に積層

       接着した板で、幅はぎ接着はしなくてよい。

「種類」/ JASでは、3層3プライ・3層4プライ・5層5プライ・5層7プライ・7層7

プライの5種類で、ひき板の幅寸法は異なっても、各層の厚みは同一である事。

「規格」/ ラミナの品質が同一の「同一等級構成」→「S」記号で「S60」

外層と高性能を配置の「異等級構成」→「Mx」記号で「Mx60」と称する。

「特性」/ 表層の繊維方向 → 「強軸」、直交方向 → 「弱軸」

「性能」/ 層を直交 → 直交方向の性能を高める。「強軸」は層の直交で他種より強度小。

「使用制限」/ 軸材に不向き、床・屋根・壁など平面状の部材が理想である。

 

(R3年11月15日)

最新版「構1講習会テキスト」の変化(その4)

最新版「構1講習会テキスト」の変化(その4)

法改正の背景・必要性で述べた「今後の木造建築物の推移」を考えると、「学び」の内容が明確に見えてくる。ならば、否応なく、最新版「構1講習会テキスト」を読破となる。

前回の「CLT」の記述のあとにある「鉛直架構のモデル化と靭性」から始まるのです。

 架構のモデル化において、最初に「中大規模木造の鉛直構面」をテーマにしている。

非住宅で規模が比較的大きい木造建築物について「モデル化」を以下3点で論じている。

  • 部材の端部接合がピン接合で、部材は軸方向力のみ負担する架構。
  • 部材の端部接合がモーメント抵抗接合で、部材が軸方向力・曲げモーメント・せん断力を負担する架構。
  • 軸部材に、構造用合板などの面部材が釘打ち・ビス止め等で接合された構面の組み合わせによる架構造。

このように、「計算の遡上」に載せる基本的な考え方を示した上で、木造の接合部は、一般に完全なピンや剛にはならず、めり込み等で接合部での変形の考慮が重要と記述している。

 IT機器の進歩で「中大規模木造」を対象に一貫計算プログラムも出現し、「モデル化」が

その利用するプログラムの制約を受ける事も考慮する必要も述べられている。

道具は所詮「便利ツール」で、「設計者判断=説明責任」を伴う事を肝に銘じるべきです。

「筋かいによる構造」も次回述べてまいります。

 

(R3年11月25日)

最新版「構1講習会テキスト」の変化(その5)

最新版「構1講習会テキスト」の変化(その5)

法改正の背景・必要性で述べた「今後の木造建築物の推移」を考えると、「学び」の内容が明確に見えてくる。ならば、否応なく、最新版「構1講習会テキスト」を読破となる。

前回の最後に述べた「筋かいによる構造」の記述です。

 この記述で興味深いのが「筋かい端部」の設計の考え方である。

今一度、お持ちなら最新版「構1講習会テキスト」のP-220の最下部の記述を見て欲しい。

そこには、以下の記述がある。

この納まりは、筋かい木部が柱や梁に直接は接触していないので、圧縮も引張りも、同じ

バネで検討できる。

 最も、妥当なものである。そこに「バネ理論」が隠されている。その指針となる日本建築学会の木質構造設計規準・同解説の「602 曲げ降伏型接合具を用いた接合」です。

設計の手順は①~⑤に示されており割愛いたしますが、各自の手計算を切望いたします。

毎年のように「未修了」とならない為にも、「構造計算が自分で出来る」ように望みます。

「筋かい架構」のあとは「面材耐力壁による架構」ですが、この記述は、2018年改訂版の

講習会テキストを踏襲し、一部すべり特性の算定など踏み込んだものとなっており、考え方の利用に3つの適用条件がある事も示しています。

 さらに、大空間の形成に必要な「アーチ構造」とか「トラス」も論じられています。

2015年3月には「木造校舎の構造設計標準」(JIS A 3301)が改訂され流通材を用いた

標準的なトラスの設計例も示されており、実務では「教材」になります。

あとは、各自の自助努力に期待する以外ありません。

 ここに来て、政府は省エネ性能の高い木造建築物を増やすため、建築基準法の規制を

緩和する方針を固めて、脱炭素社会への取り組みの一環として、3階建て木造住宅を建て

やすくため、木造建物の高さ制限を緩め(13m超→16m超)、行政手続きやコストを減らす。

来年の通常国会に「建築基準法改正案」を提出するとの報道があります。

 より一層、「構造計算の重要性」がクローズアップされて参ります。

(R3年12月05日)

最新版「構1講習会テキスト」の変化(その6)

最新版「構1講習会テキスト」の変化(その6)

今回の論評も最後になりました。最新版の記述から各自にて「何が理解不足」かの

判断して頂ければ、それが「学び」となります。2018年改訂版と対比するとその違い

も理解出来て、何を学ぶのかも見えてきます。そこに「一筋の光」を当てて論評します。

「木質ラーメン構造」の項目では、柱脚及び柱梁接合部に剛性の高い接合部が必要となる。

横圧縮(めり込み)の剛性が小さい為、剛性を高めるのは容易ではない。

木造の接合は、接着接合にしない限り、完全な剛にならない。そこで「半剛節接合」は

回転剛性を与え、研究テーマとなり「モーメント抵抗接合」となっているのが現状である。

木質系のモーメント抵抗には6つのものが示されているので、現場施工を踏まえて各自

記述内容の理解となります。万遍なく出題となる検定考査にスキルアップしか道はない。

柱はり接合部の設計法に「ドリフトピン」の力の流れを①~⑤で詳しく解説しています。

このような設問を出題されても「手計算」による事前訓練の有無が運命結果を示します。

さて、最後に「CLTパネル工法」の記述に理解が必要である。

「CLTパネル工法」/ 小幅パネル架構・大版パネル架構①、大版パネル架構②の3つ

          終局時 → 分離型架構と一体型架構に分類

「設計ルート」/ 平28国交告第611号で枠組みが定められている。

「ルート3までの設計法」/ 5つに分けられている。

「ルート2の応力割増しDf」「ルート3のDs」/ 架構形式と耐力壁の長さの組合せで数値

「CLTの現状」/ ルート1で建てられている。

「ルート1」/ ①~④の制限がある。接合金物は、木住センターのクロスマーク金物の利用

「ルート2以上の計算」/ 壁パネル部分のモデル化 → フレームモデルが多い

            せん断パネルをブレース置換(筋かい要素の軸剛性E・Ab)モデル

その他、伝統木造系の耐力壁・木造系混構造建築物・共通事項など、最新参考文献もある。

この「講習会テキスト」の変化をしっかりと読み取る努力をすべきである。

既に、9/25(土)と9/26(日)の「リモート学習 / 第四弾」のご参加者のみ事前にこの公開記事をお知らせ済みでした。真摯に「取り組む方」に、各自の自己問答としています。

“ 怠けたら負け ” 肝に銘じて壁を乗り越えましょう。

 

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