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構造設計を学ぶ-5

(H27年09月05日)

≪第1回≫鋼構造(鉄骨構造)を考える(その1)

 今回からの見出しである部分の「鋼構造」or「鉄骨造」のどちらにするかで迷いました。

そこで、文献等には下記のような記述があったので「鋼構造(鉄骨構造)」にした次第です。

「鋼構造(steel structure)」→鉄骨構造。構造主材に形鋼・鋼板・鋼管などを用い、高力ボルト・
溶接などによって組み立てた構造。軽量で粘りに富み、高層建築や大スパン構造に用いられる。

「鉄骨構造(steel structure)」→鋼構造。構造上主要な部分に、形鋼・鋼板・鋼管などの鋼材を
用いて構成された構造。S造と略されることがある。

外来文字では、まったく同じ表現であり、「鋼構造(鉄骨構造)」にご理解願えると思います。

今回も実務者を対象に今一度学びの原点に戻り、かつ解説の難易度を上げています。

構造設計1級建築士講習会テキストを参考にしながら進行して参ります。

構造要素の力学特性の知識の涵養では、構造物の弾性限界(線形限界)~終局(限界)状態に

関する知識・能力要求です。否が応でも「構造物の倒壊防止」に崩壊形を理解し、この

崩壊形を規定する現象として「塑性崩壊」「座屈」「破断→疲労破壊」などがあります。

鋼材の特性では、「応力-ひずみ関係」「靱性」を論じます。

応力とひずみの関係は、「フックの法則」により弾性範囲は比例関係を示しますが、「降伏」
という現象を境に「塑性化」した状態となります。鋼材は、一旦「塑性化」した後、
逆方向の応力に対して弾性限強度が低下する「バウシンガー効果」が見られ、
弾性域と塑性域の境界が不明瞭になります。塑性域では「ひずみ硬化」の強度上昇があり、一般には

「移動硬化」と呼ばれています。繰返しのひずみ振幅による弾性域の強度が増大するのを「等方硬化」現象といいます。

また、「応力-ひずみ」関係における「靱性」は「切り欠き靱性」と呼ばれる「シャルピー吸収エネルギー」である。

この「切り欠き靱性」は非常に大きな塑性変形を伴う「延性破壊」とか脆性破壊である

「へき開破壊」など様々な形態をする鋼材の破壊に対する抵抗指標であるのです。

鋼材は温度が低下すると「延性破壊」から「脆性破壊」へ変化します。この変化する

領域を「遷移領域」、脆性破面率を縦軸に温度を横軸に表わす曲線を「遷移曲線」という。

鋼材を低靱性化させる主な要因として、「溶接による熱影響」「塑性変形」「温度低下」が

挙げられます。

掲載日:2013年2月9日

≪第2回≫鋼構造(鉄骨構造)を考える(その2)

 鋼構造の部材設計について解説いたします。部材が支持できる応力(耐力)には弾性限界と

いわれる「短期許容耐力」、「降伏耐力」や全塑性状態や座屈による限界状態での終局(最大)
耐力として「終局曲げ耐力」とか「座屈耐力」の2種類が定義されます。

鋼材の応力-ひずみ関係に見る「ひずみ硬化」は、部材の終局 (最大)耐力の算定においては
耐力の上昇は一般に無視しますが、接合部の設計では構成する鋼材の引張強さσuを用いて
算定されるなど耐力の上昇を考慮します。接合部の最大耐力の評価に鋼材の引張強さσuを
用いる理由は、「接合部の長さ」にあり部材の長さに比較して非常に短いことなのです。

難易度は大変高いですが、「圧縮材」をテーマに「座屈」と「座屈補剛」や座屈した後の

「安定耐力」を論じて参ります。「座屈の問題」を掘り下げて知識の涵養を期待します。

鋼構造部材は細長くかつ薄い板要素で組み立て構成されます。不安定現象の「座屈」を

問題視して常に配慮を要します。単一圧縮材の「針金」を思い浮かべて下さい。

引っ張っても切れないが、圧縮には簡単に「曲げ座屈」を生じます。この他、「曲げ」を

受ける部材の横座屈、板要素の局部座屈などが鋼構造部材の構造骨組の耐力安定や、地震に
対する耐震性のひとつの指標である「塑性変形能力」に影響します。

「座屈解析」とは、座屈が部材や構造物の崩壊を支配する現象であり、多くのパターンの

「座屈モード」の中から最小の「座屈荷重」を与えるモードの追求であるはずです。

このように「座屈解析」では、座屈した後の変形状態に関する「釣合微分方程式」の解を

見いだすことに他なりません。

中心圧縮材の耐力は、曲げ座屈荷重によって決まり、弾性範囲で「曲げ座屈」する細長い

材の座屈荷重は「オイラー荷重」です。一方、材が太く短くなると塑性域で座屈が生じて、
「塑性座屈」または「非弾性座屈」と呼ばれ、接線係数理論によって求める事になります。

しかし、実際の圧縮材では元々のたわみ・偏心した荷重・残留したひずみ応力などにより

「座屈荷重」は低下いたします。

掲載日:2013年2月20日

≪第3回≫鋼構造(鉄骨構造)を考える(その3)

 引き続き「曲げ材」をテーマに、H形断面の梁の「曲げ」や「横座屈」の耐力を

解説して参ります。基本を押さえて頂きたいので順を追って記述します。

まず、H形断面梁の曲げ耐力

「降伏」「全塑性」「横座屈」「局部座屈」などに対応する耐力指標として

My=Ze・σy ・・・・・これは、「降伏モーメント」で弾性限界を表わす指標である。

Mp=Zp・σy ・・・・・ これは、「全塑性モーメント」で1つの終局状態とみなされる。

ただし、降伏モーメントや全塑性モーメントに達する前に横座屈や局部座屈が生じると

これらが梁の「曲げ耐力」を限界づけます。曲げ材の「座屈耐力」に関しては、「横座屈

耐力」と「局部座屈耐力」の小さい方の値を採用します。

また、圧縮材と同様に「局部座屈耐力」はフランジやウェブの幅厚比の関数として表現されています。

H形断面梁の「弾性横座屈耐力」は、等曲げの場合、Me0として

Me0=√(サンブナン項)+(ワーグナー項) の摸式として表現出来ます。

モーメント勾配がある場合、Meとして

Me=Cb √(サンブナン項)+(ワーグナー項) の摸式となります。

ここで、Cbは曲げモーメント分布の係数でCb=1.75+1.05κ+0.3κ2≦2.3 なのです。

上式によれば、κ=-1(等曲げ)のときCb=1.0となります。

弾性横座屈耐力Meを用いて規準化された横座屈細長比λbは

λb=√My/Me

圧縮材の規準化細長比の考え方と同様であり、λbでは細長比の規準値を1としている。

横座屈耐力(終局耐力)Mcの算定では

λb≤pλb : Mc=Mp と考えられる。

ここで、pλbは塑性限界細長比を示し、経験式よりpλb=0.6+0.3κである。

梁の横座屈が拘束されたH形断面梁の幅厚比と塑性変形能力は、フランジやウェブの

幅厚比により左右され、一定の耐力(この場合は全塑性モーメント)を維持して塑性変形が

増大できる能力を意味します。当然、この能力が高いほど「塑性エネルギー吸収能力」も

高い部材となります。

掲載日:2013年3月12日

≪第4回≫鋼構造(鉄骨構造)を考える(その4)

 「梁」に続いて「曲げ」と「軸力」を受ける部材である「柱」をテーマにいたします。

柱の限界耐力は、圧縮軸力と曲げモーメントを受けて相関関係にあります。

弾性限耐力(降伏耐力)は

(N/Ny)+(M/My)=1.0

全塑性耐力(終局耐力)は

(N/Ny)+0.85×(M/Mp)=1.0、(M/Mp)=1.0

これらの耐力式の成立は下記の4つの要因が阻害する。

① 曲げ座屈、横座屈(角形鋼管や円形鋼管は除く)

② 局部座屈

③ 曲げモーメント分布(Pδモーメント)

④ 2軸曲げ

柱の曲げモーメント分布では、柱のたわみによって生じる付加曲げモーメントがある。

部材端応力に関する情報から、節点の移動によるP⊿モーメントや、柱が細長くなると

たわみδが大きくなってPδモーメントが大きくなり、その結果、最大曲げモーメントが

部材の中間で生じるようになります。この影響を考慮した微分方程式の解を用いて、軸力と曲げを受ける部材には部材端曲げモーメントと部材端回転角の関係を表わす事の出来る「座屈たわみ角公式」もあり、骨組みの複雑な系の弾性座屈問題を扱う場合は便利である。

柱の幅厚比と塑性変形能力では、局部座屈による耐力低下の影響を及ぼさない事が前提で

あり、柱の限界耐力に達するためには断面を構成する板要素の幅厚比の制限値がある。

局部座屈による耐力低下がなければ終局耐力は全塑性値に達して塑性変形能力も保有していることになるのです。

柱梁接合部パネル部は、柱と梁のフランジ板厚中心間距離で囲まれた領域を定義したものであり、db/dcを「パネルアスペクト比」という。

曲げモーメントによるパネル部の垂直応力σはパネルアスペクト比が大きくなるほど増大するので、耐力式としての適用範囲はdb/dc = 1.8以下の接合部パネルに限定されます。

掲載日:2013年3月24日

≪第5回≫鋼構造(鉄骨構造)を考える(その5)

 「鋼構造の思想」として、「降伏と終局」につき少し掘り下げて解説します。

柱のように「曲げモーメントM」と「軸力N」を受ける部材断面の垂直応力分布から

前回述べたように、最大縁応力が降伏応力度に達する時の曲げモーメントを「降伏曲げ

耐力(弾性限曲げ耐力)」でした。それに対し「全塑性状態」にある場合の曲げモーメントを

「終局曲げ耐力」と区分しています。

この柱の終局曲げ耐力は、適用条件が存在します。少し難易度が高いです。

・ 全塑性相関式の適用条件として、下記の3条件があります。

(a) 最大軸力比 : n≤0.75

(b) 軸力比と細長比の組合せ : nλc2≤0.25かつnλc2≤0.25(1+κ)

(c) 横座屈細長比の最大値 : λb≤0.75 pλb

・上記3条件が満足されない柱の終局耐力は、全塑性相関式を適用できません。

実務でよく用いる箱形断面柱は、柱の終局耐力を近似する以下の拡大係数αm

αm={1-0.5(1+κ)√N/NE}/1-N/NE

を用いてMmax=αmM1と全塑性モーメントMpに置換します。

その結果、軸力比nにより

n≤0.5のとき 4/3・(N/Ny)2+αm・(M1/ Mp) = 1

n›0.5のとき (N/Ny)+αm・4/3・(M1/ Mp) = 1

柱の幅厚比と塑性変形能力は、局部座屈による耐力低下が影響を及ぼさない前提である。その為には板要素の幅厚比に制限値を設定して、終局耐力を全塑性値に達せしめて、かつ

塑性変形能力を保有させます。柱の曲げ耐力に及ぼす幅厚比は大きくなると最大耐力が

小さくなり、塑性変形能力も低下します。

柱の変形と水平変位の関係から必ず論じられるものに「P⊿効果」と「Pδ効果」がある。

これらのメカニズムの違いなどを解説します。

「P⊿効果」とは、鉛直力Pと水平力Qを受ける高さhの片持柱を例えてみますと、微小変形の仮定より柱脚の曲げモーメントはQhです。一方、柱頭の水平変位⊿を考慮した

変形後の釣合条件によると、柱脚の曲げモーメントは

M= Qh+P⊿ となります。微小変形の場合に比較してP⊿だけ増加する。

これを「P⊿効果」による付加曲げモーメントといいます。

一方で、片持柱の中間部においてもPが継続的に載荷されていると、「柱のたわみ」に

よって「2次的な付加曲げモーメント」が生じます。

この現象は、柱の両端を結ぶ直線材からの「たわみδ」に依存する「Pδ効果」なのです。

プッシュオーバー解析にはとても重要なものとなります。

掲載日:2013年4月5日

≪第6回≫鋼構造(鉄骨構造)を考える(その6)

 「柱梁接合部パネル」の重要性を是非ご理解願いたいです。私は、神戸大学大学院の

故金谷弘先生を師と仰ぎ、あらゆる文献を若年期に読破した思い出があります。

過日、東京・田町の日本建築学会で京都大学の吹田啓一郎先生にお会いし寸暇のお話を

する機会を得ました。今まで、記述していることは文献等を鑑みながら一部は思考参考も

ございます。最近の「多忙」を理由に自己研鑽の及ばない恥ずかしい事ですが・・・。

ご存知のようにこの部位は柱と梁のフランジ板厚さの中心間距離で囲まれた部分であり

db/dcをパネルアスペクト比といいます。接合部パネルの応力は「正加力(→)」の場合

曲げモーメントMは時計廻りに、せん断力Qは上側(←)・下側(→)を示し、軸方向力

であるNはパネルに対して上側(↓)・下側(↑)となり、パネルの微小要素を捉えてみると

垂直応力σとせん断応力τの組合せとなります。

この部位における耐力式は、垂直応力σに軸力による成分だけ考慮して、曲げモーメントを無視し、せん断応力τとの組合せ応力に対してミゼス(Mises)の降伏条件を適用します。

この条件適用には範囲があり、db/dc(パネルアスペクト比)が1.8以下の接合部パネルに

限定されます。これによって、降伏耐力(弾性限耐力)や全塑性耐力に及ぼす曲げモーメントによる垂直応力σの影響は無視できるのです。

この分野では、「板要素の研究」において「日本建築学会」の表彰を受けられた筑波大学の井上哲郎Drには敬意を表します。先人の知恵に授かり感謝すべき内容でもあります。

柱梁接合部パネルの降伏耐力(弾性限耐力)は、弾性域にあるパネル断面のせん断応力τの

分布によって決まります。このせん断応力τは、曲げモーメントの変化によって生じます。この応力誘導は材料力学となりますので割愛します。

結果論として、軸力とせん断の組合せ応力状態の接合部パネルの降伏耐力pMynは、

pMyn = (1/ks)√(1-n2)Vpτy

τy = σy/√3

Vp = Apdb

柱梁接合部パネルの終局耐力(全塑性耐力)は、軸力のない接合部パネルの全塑性曲げ耐力

pMpは、有効断面全体にわたって降伏せん断応力τyが分布している状態に対応するので

pMp= Vpτy

軸力比がnならば、箱形断面の対角方向と円形中空断面では、全塑性耐力pMpnは、

pMpn = √(1-n2)Vpτy

以上となります。

掲載日:2013年4月18日