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「崩壊形」を学ぶ 

(R5年4月15日)

崩壊形(その1)

崩壊形(その1)

昭和56(1981)年の「新耐震設計法」から40年、すでにPCの計算能力の著しい向上に

伴い静的非線形解析は進化しています。過去には2016年4月に入手していた日本建築学会

の「鉄筋コンクリート構造保有水平耐力計算規準(案)・同解説」を読破していました。

そこに、令和3(2021)年に刊行されたのが「保耐規準」です。最新の研究成果が反映された「鉄筋コンクリート構造保有水平耐力計算規準・同解説」で(案)が5年で消えています。

この変遷について考えて見ますと、新耐震設計法のあと、1995年に兵庫県南部地震とか

2011年に東北地方太平洋沖地震に見舞われ、耐震偽装事件による法改正により構造計算に

関する大きな変化の中、構造設計者から保有水平耐力計算に関する要望が提示されてきた。

時系列に被災しては「改訂版」の繰り返し、予算の少ない中の「知見の積み重ね」の先人

の英知に感謝しながら、二次設計に関して日本建築学会から1981年に「建築耐震設計に

おける保有耐力と変形性能」も発刊され、今でも知見に「追いつく」努力の繰り返しです。

  さて、「保耐規準」ですがその目的は、推奨する崩壊メカニズム(黄色本P-346の崩壊形)の架構を実現する保有水平耐力計算方法を具体的に示すことにある。最も妥当である。

構造を理解しようとする方々に、「迷いや混乱」の原因は、黄色本の2007年~2015年~

2020年の「崩壊形」の記述を見ていれば理解出来ますが知見の裏付けが常に伴うのです。

 印字ミスは、誰でもある。「保耐規準(案)」では、P-201解説図20.16における回転力の

「矢印」の向きなどヒューマンエラーである。

増分解析の進歩から架構の保有水平耐力計算法においてもまたVer.upが余儀なくされる。

部材の耐力計算式の検証の他、部材種別の判定方法として部材の限界変形角を考慮した

判定指標(パラメータ)も示され、構造特性係数Dsを用い、全体崩壊形の保証設計を行う

ことにより、「全体崩壊形の実現」が架構の更に安全なものかを示している。

一般に、下部構造を含めた保有水平耐力計算は現在行われていないので、留意事項を含め

「崩壊形の保証設計」について、「保耐規準」の考え方を次回以降に示します。

 

 

 

 

(R5年4月25日)

崩壊形(その2)

崩壊形(その2)

構造設計の実務や審査で、「崩壊形」に戸惑うことが多い。それは「学びの不足」です。

荷重増分解析の進捗内容をPCの「ファイル内」あるスケルトンな情報の意味を理解しなければならない。そこに、つまずき迷い先に進まず「計算途中」となり一貫計算プログラムメーカーの「サポートセンター」に「HELP」となる。その殆どが休日・真夜中です。

架構の保有水平耐力計算法においても、Ver.upの連続も更に拍車をかけています。

プログラムの中でも部材の耐力計算式の検証の他、部材種別の判定方法として部材の限界

変形角を考慮した判定指標(パラメータ)も示され、構造特性係数Dsを用い、全体崩壊形の

保証設計を行ない、より「全体崩壊形の実現」が架構の安全なものかを示している。

一般に、下部構造を含めた保有水平耐力計算は現在行われていないので、留意事項を含め

「崩壊形の保証設計」について、「保耐規準」の考え方を示します。

 2020年版 建築物の構造関係技術的基準解説書 (黄色本)のP-344に「保有水平耐力の

計算の原則」があり、これは「保耐規準」の考え方を受け継いでいます。

すなわち、一次設計の地震力作用時の応力算定において構造耐力上主要な部分とみなした

部材からなる架構について、その「弾塑性を適切に表す」ことのできる「モデル化」を

行う事によって一定条件のもとで荷重増分解析法により計算するのです。

 「一定条件のもとで」を理解することが最も大切であり必修となります。否が応でも

黄色本P-344のa)~b)の記述、すなわち「外力分布」や「釣合い条件」となります。

 計算の原則には「その他」もあり、黄色本P-346からのa)~e)の記述になっています。

だからこそ、この高度な内容を早朝にしっかりと読破せよとなるのです。

建築物の一部又は全体が地震力の作用によって、崩壊形(崩壊メカニズム)を形成において

のみ、鉛直部材が負担する水平せん断力の総和となるのが「保有水平耐力」です。

しっかりと、この「崩壊形(崩壊メカニズム)を形成」を把握して捉え切らないと困るはず。

一般財団法人の「日本建築防災協会」からの「黄色本の講習会」もありました。

 当方では、著作権に配慮しながら今年の「構造勉強会・補習講義」として「黄色本の

要点」として全12回を6回に分割しております。次回に「崩壊形(崩壊メカニズム)を形成」

につき、その一部を示します。

 

 

 

 

(R5年5月05日)

崩壊形(その3)

崩壊形(その3)

この連載資料は、昨年の夏(令和4年6月~8月)に長期滞在した北海道紋別郡西興部村のコテージ生活の中で書き下ろしたものです。構造設計の実務や審査で、「崩壊形」に必要となる知識に限定して、情報を開示して参ります。著作権にご注意下さい。

耐震計算(二次設計)の方針で「崩壊形」が出て参ります。

これには、以下3つあります。

(全体崩壊形)-建築物全体に水平力に対して、不安定な状態となるのに十分な塑性ヒンジ

が形成される。

(部分崩壊形)-特定の階に水平力に対して、部分的に不安定な状態となるのに十分な塑性

ヒンジが形成される。

(局部崩壊形)-特定の部材が破壊し、常時荷重に対して架構の一部が耐えられなくなる状態となる。

保有水平耐力は、地上の(地下は適用除外です)上部構造が構造耐力上安全な状態となるように、建築物全体の浮上りによる転倒崩壊形となるものであっても、浮上りはないものとしても上記3つの崩壊形を求めて計算します。

保有水平耐力算定の原則には、以下4つが用意されています。

  • 荷重増分解析により計算する場合、想定する外力分布は地震力の作用を近似した水平

方向の外力分布に基づくものとし、原則として「Ai分布に基づく外力分布」とする。

  • 地震力と建築物の各部分の応力の「釣合い条件が満たされている」ものであること。
  • 建築物の各部分の応力は、どの部分においても「各部材の終局耐力を超えない」こと。
  • 建築物が「崩壊形の形成条件」を満たすこと。

ここまで説明すれば、ある程度「骨格・シナリオ」が掴めたはずです。

次回には、更に踏み込んで「外力分布(必要保有水平耐力Qun分布の適用条件)」を説明したり、

その先には「保証設計」や「転倒に対する検討」など解説せざるを得なくなります。

 

 

 

 

 

 

(R5年5月15日)

崩壊形(その4)

崩壊形(その4)

この連載資料は、昨年の夏(令和4年6月~8月)に長期滞在した北海道紋別郡西興部村のコテージ生活の中で書き下ろしたものです。構造設計の実務や審査で、「崩壊形」に必要となる知識に限定して、情報を開示して参ります。著作権にご注意下さい。

耐震計算(二次設計)の方針で「崩壊形」に関連して「保証設計」が出て参ります。

これについて、噛み砕いてわかりやすく解説と説明をいたします。

「保証設計」って何だろう・・・何に対して、何を保証するのかが解れば理解できます。

法令や告示では、構造耐力上支障のある急激な耐力低下の防止(保証設計)としています。

だから、「急激な耐力低下の防止」の中にある「急激に耐力」が低下する要因を考えれば

健全な骨組みを形成させる為に必要なものも見えてくるはずです。そこが「学び」です。

前回は、「外力分布(必要保有水平耐力Qun分布の適用条件)」を説明したので、その先に

ある「保証設計」を掘り下げます。

 一般に、「耐震計算」では地震に耐えるのに「耐力(耐震)壁」の採用が多いのですが

「保証設計」を論じるにはスタンスが異なり、「靭性(粘り)」に期待した設計を扱う。

この事には、告示 平19国交告第594号第4が該当いたします。以下の解説内容です。

構造耐力上主要な部分である柱、はり若しくは壁又はこれらの接合部について、第一号に

おける架構の崩壊状態の確認・・・これが「崩壊形(崩壊メカニズム)」である・・・に

当たっては、局部座屈、せん断破壊等による急激な耐力低下が生ずるおそれのないことを要求しています。

 建築物に「靭性(粘り)に期待」して設計する場合、建築物全体が崩壊形(崩壊メカニズム)に達する以前に「せん断破壊等」を生じさせないだけではなく、設計上採用した構造特性

係数Ds値に相当する(NEW ・MARK理論のエネルギー吸収能力による減衰)塑性の変形量

に達するまでの段階 (塑性域における「塑性流動状態」=「塑性流れ」を意味する) でも

「せん断破壊等」を何があっても防止・阻止しなければ「崩壊・倒壊」につながるのです。

 次回は、「転倒に対する検討」を論じます。

 

 

 

 

 

 

(R5年5月25日)

崩壊形(その5)

崩壊形(その5)

この連載資料は、昨年の夏(令和4年6月~8月)に長期滞在した北海道紋別郡西興部村のコテージ生活の中で書き下ろしたものです。構造設計の実務や審査で、「崩壊形」に必要となる知識に限定して、情報を開示して参ります。著作権にご注意下さい。

耐震計算(二次設計)の方針で「崩壊形」に関連して「転倒に対する検討」があります。

これについて、噛み砕いてわかりやすく解説と説明をいたします。

「転倒に対する検討」では、「転倒崩壊形」も論じますので、難易度が高くなります。

法令や告示では、塔状(屛風状・衝立状)態を考えさせます。それが「塔状比」なのです。

「転倒の要因」から、「屛風状」「衝立状」などのスリムな「ペンシルビル」が該当です。

「崩壊形」でも触れましたが、上部構造が構造耐力上安全になるように、建築物全体の

浮上りによる「転倒崩壊形」となる場合であっても、浮上りは生じないものとしています。

だから、「浮上らない」ならば、その措置や検討はどうするのか・・・それが「転倒の検討」になるので、理解できたはずです。残念だが黄色本にはその因果関係に記述はありません。

健全な骨組みを形成させる為に必要なものも見えてくるはずです。そこが「学び」です。

今回の、「転倒崩壊形」の「転倒に対する検討」を論じます。

告示 平19国交告だ第594号第4に明記されていますので、以下の解説にいたします。

建築物の地上部分(地下は対象外)の「塔状比(計算しようとする方向における架構の幅に

対する高さの比)」が「4を超える場合」にあっては、標準せん断力係数Coを0.3以上と

した計算、保有水平耐力に相当する層せん断力が生ずる場合に各階に作用するものとした

せん断力の「いずれかが作用する」ものとした場合に、建築物の地盤や基礎ぐい、地盤

アンカーに生ずる力を計算して、「極限支持力を超えない事」を確かめるのです。

「極限支持力」とは、地盤又は杭や地盤アンカーの支え得る最大荷重です。

「塔状比(B/H)」の計算においては、建築物全体の形状をよく理解し「見つけ幅B」や

「地震力算定用高さH」の取り扱いにも留意する必要があります。

 

 最終回は、「異国の地で苦しまれた異国の先生」の「崩壊形」の学び方で結論とします。

 

 

 

 

 

(R5年6月05日)

崩壊形(その6)

崩壊形(その6)

この連載資料は、昨年の夏(令和4年6月~8月)に長期滞在した北海道紋別郡西興部村のコテージ生活の中で書き下ろしたものです。構造設計の実務や審査で、「崩壊形」に必要となる知識に限定して、情報を開示して参ります。「崩壊形」を学ぶも最終回となりました。

最終回は、「異国の地で苦しまれた異国の先生」の「崩壊形」の学び方で結論とします。

ささやかな「構造のご支援」を長年させて頂き、受講者の皆さまには感謝いたします。

当方の「構造勉強会」にも米国や台湾・中国の方々のご参加もあります。

そんな中において、一冊の本「建築構造設計教本(森北出版)」で「崩壊形」を異国の地で

解りやすく論じられていますので、ご紹介方々、解説を付け加えて論じます。

 まず、著者である「陳 沛山(ちん・はいざん)」先生ですが、お名前で分るように中国の方であり、1962年 中国河南省でお生まれになり1996年に法政大学大学院で「博士(工学)」となられ、現在は九州工業大学大学院の教授です。34才での博士(工学)号に当方の若年期に神戸大学大学院での同じ歩みの挫折に残念です。ポスドク(Pos.doc : 博士研究員)でもよかったかもです。

「陳 沛山(ちん・はいざん)」先生による「崩壊の概念」から「崩壊形」に至る内容にスポットを当てて解説いたしますので、著作権にご注意下さい。

 保有水平耐力計算は、一部分の部材の「塑性化(降伏する事)」を許容するが、架構の崩壊

をさせないとう前提条件となっています。ここが重要である。

「降伏」とは、ある応力に達したとき生じる粒子間の滑り現象で、「弾性 → 塑性」への

分岐点でもあります。極めて稀に発生の大地震に対して、架構が崩壊しないように十分な耐力を持たせています。「崩壊」は架構に対する概念です。架構の部材が塑性化して「塑性ヒンジ(回転を自由に許すメカニズム)」が生じて架構が不安定機構になった状態です。

この「不安定機構」= 「崩壊機構(崩壊形)」= 「崩壊メカニズム」である。

また、ある架構が崩壊するときの崩壊機構はひとつとは限りません。

学んでいる「全体・部分・局部」の3つの崩壊形です。

崩壊機構は、建築物の耐震性能の評価に影響されます。だからこそ、機構自体の分析も

大切となり、「柱にヒンジ」が生じると建築物全体の崩壊につながってしまうのです。

「部分崩壊」はエネルギー吸収能力が限られた部分のみになり、耐震性能を期待した

ものに程遠くなります。だからこそ、「全体崩壊形」が望ましく、我々、技術者にとって

適切な判断が最優先されるのです。

 

異国の地で頑張って教鞭をとられる先生に感謝し、「学びに終着駅なし」で頑張ります。

 

 

 

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